昨年の観測結果を見ると,高度100mでは地上気温に比べておよそ5度低い気温が測定されていた(2013年8月9日の観測結果).昼間の対流境界層において,気温の温度減率は100mで1度というのが相場である.これより大きな温度減率は不安定成層を意味する.不安定成層をしていれば対流が生じ,対流によって熱が輸送された結果として安定成層に近い構造がつくられる.すなわち,昨年測定された100mで5度という温度減率が実際にあったとは考えにくく,気温が正しく測定されていなかった可能性が高い.観測に失敗したままでは終われない.我々は気温の測定に再挑戦することにした.
昨年は牛乳パックで作成した日除けの中に温度計を入れて測定をおこなった.日除けの中と外で気温を測定するとその間には2〜3度の差が見られたことから,日射の影響はとても大きく日除けが重要であることが再確認された(牛乳パック日除けの中と外).しかしながら,牛乳パック日除けが必要十分に機能していたかどうかの検証はおこなっていなかった.牛乳パックの側面には通風を確保するために開けた窓があり,そこから漏れ込んだ日射が測定結果に影響している可能性は高い.また,通風のための窓を開けたとはいえ,十分な通風が確保されているという保証もない.
今回は遮光と通風の両方において十分な性能を持たせるべく,ファンを使って強制的に通風する日除けを製作した.強制通風とすることで十分な通風を確保するとともに,日射の漏れ込みにくい構造とすることができる.ファンは自作パソコン用のケースファンを用い,9V形(006P型)の乾電池を2個直列につないで回転させるようにした(ファンの定格電圧は12Vなので,本当は18Vで駆動するのはよろしくない).また日除けは2重構造にし,外側はアルミホイルを貼って太陽光の反射率を高めるとともに,内側は黒色に塗装して内部で日射が反射することを防ぐようにした.
作成した強制通風式日除けの性能を評価するため,アスマン式通風乾湿計と昨年度の牛乳パック日除けを日向に並べて気温の測定をおこなった.